蓮華童子の日記

真言秘密行法の修法@自坊を中心にアップして参ります。

人間の証明~ジョー山中~

 
ジョー山中――、本当に惜しい人だった…。今さら言うのもなんだけど、こんな風に魂の歌を唄えた歌手はそうそういないんじゃないかな。
 
人間の証明』が映画化されて、もう40年近くになるのだろうか。
 
ジョーさん、また生まれ変わってきて、どこかで、いつかきっと、きっと歌って下さい。
 
【Quote】
~『西条八十全集6 童謡Ⅰ』(西条八十国書刊行会1992)より~

母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。

母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。

母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。
【Unquote】