蓮華童子の日記

真言秘密行法の修法@自坊を中心にアップして参ります。

『鉄の雨』 さとうきび畑 夏川りみ

先年亡くなった叔父(父の兄)が、ずっと前に軍隊時代の話をしてくれた。後にも先にも、その重い口を開いたのは、その時だけだったと思う。
 
昭和20年、叔父は帝国陸軍の軍曹として鹿児島にいた。ある日、列車で部隊移動中、米国艦載機の空襲を受け、走行中の列車から脱出。
 
畑のあぜ道を仲間と必死に走る。すると後方から敵機が接近、機銃掃射を開始。この頃の米国艦載機は、とにかく、眼下の日本人(軍人市民を問わず(!!))を見れば、手あたり次第に撃ちまくっていた。
 
並走する仲間に向かって、『まっすぐ走るな!、撃たれるぞ!』と大声で叫ぶも、次の瞬間、バババババッ、敵機の機銃弾が走っている仲間の背中から腹を突き抜けていった…。
 
叔父は中学生時代に叩き込まれた柔道の受け身をしながら、じぐざくに動いては走りを繰り返し、間一髪、『鉄の雨』の追撃を逃れ、竹やぶの中に飛び込んだ…。
 
『竹やぶに入ると、竹の幹を伝うようにしてカラカラと弾丸が走るんだよ―――。』
 
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自分にできること。幼少時代に聞いた身近な、そう、悲惨な現実をそのまま後進に伝えるだけだ。
 
この国/日本を愛するがゆえに。