蓮華童子の日記

真言秘密行法の修法@自坊を中心にアップして参ります。

安らかの顔

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職場でアシスタントをしてくれているTさんのお父さまがガンで、初不動の日(1/28)の明け方亡くなった。

Tさんからは、その一ヶ月くらい前に、お父上の容態が年末からおもわしくなく、救急車で搬送されたりして大変だったことを聞かされていた。

職場内の業務分担もあって、同席した(Tさんの業務分担を担うことになる)Hさんの前で大粒の涙をこぼして説明する姿は、仕事とは言え、非常に厳しいものだった。

実は同席のHさんは、私が密かにご祈祷した一人である。昨今の環境とは、職場の人たちに対して非常に強いプレッシャーを与えるところがあり、結果として精神的に参ってしまったのである。私のことを知るHさんは、そういうこともあって、私の素性をTさんにその席で伝えたのだった。

Tさんの話を聞くうちに、もはやガンも末期であることから、父上さまの余命いくばくもないことを了知した。

『ご家族の死を目前にしている人の前で酷かも知れないが、天命の尽きることは誰も逆らうことのできないもの。ならば、せめて抗がん治療などで余計に苦しむことなく、そのいのちだけはスッと天に召されるようにしたいですよね、ご家族としては…』と。

『金剛寿命の満足成就』という願意を“勝手に”こしらえて、その日よりご祈祷を始めた。一尊法を拝む時は、とくに表白の中で力を込めるなどして…。

初不動の前日、すなわち小田原に初不動/火渡り修行に出向く前日、そのTさんと不在中の打ち合わせをしたところであった。

『父をつい先日からですが、自宅に帰してもらったんです。』『病院にいた時は時々痛がってもいたんですが、この間からもうずっと眠ってるんです』

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小田原の火渡り道場は、当日の雨でヒバがたっぷり湿気を含んでいたこともあって、私が閼伽先達として点火した直後、柴灯護摩檀は『結縁信心願主の一々の思いなれば、神仏は納受されよ!!』とばかり、すさまじい勢いで白煙を噴き上げ、その姿はまさに八大龍王の冥護を感じさせるに十分過ぎるものとなった。そう、まるで山中でする秘密柴灯護摩のそれであるかのように…。

善縁の行者総出仕の激しき密呪、読経、錫丈、法楽太鼓の響き。初不動/火渡り修行、すなわち『引導をつかさどる不動明王』を本尊とする新春のご祈祷を通じて、そのお御魂は、まさに天に召し返されたに違いない。お父上さまは逝くべき先に導かれたのだ。

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『眠るように逝きました。安らかな顔をしています。』

溢れかえるようなボリュームの職場のメールボックス…。Tさんがご自宅から業務連絡を兼ねてされたメールが、そっと一通含まれている。

『南無大日大聖不動明王

合掌