痛み

実は足を骨折してしまった。『下駄骨折』というやつである。中足骨（ちゅうそくこつ）に亀裂が入ってしまった。

当日、師僧のお寺の本尊／十一面千手千眼観世音菩薩を拝んで後、石段を踏み外してしまったのだ。せっかくの修行なのに、まったく気を緩めての失態だった。

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観世音菩薩よ、教えとそれを守る国や人々の為に、かけがえのない身体・命や財産を投げうち、あらゆる困難を甘んじて受けてきた人々を、どうぞ、慈悲をもってお守り下さい。
（14世ダライラマ法王の詩より）
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己が眼（まなこ）をチベットに向ければ、ココロはひどく痛む。ソレは足をギブスでガッチリ固定してもなお疼く痛みにも似て、否、それ以上の痛みが彼の地には確実にあって、それを甘受せねばならない悲劇が進行中だ。

私の足は、三ヶ月もすれば治るだろう。だが、ココロの支配を強要される人の痛みは、おいそれとは消えない。

人のココロを支配することなど、何人たりとも出来ぬ。私のココロは、だから、ダライラマ法王とチベット仏教を篤信する人々と一緒だ。