蓮華童子の日記

真言秘密行法の修法@自坊を中心にアップして参ります。

清瀧権現

清瀧権現(せいりょうごんげん)とは、真言密教を外護する“女神”である。

※『せいりゅう』とルビを振る人がいるが、私自身は師僧から『せいりょう』と読むように習っている。(為念)

遣唐使の一員/空海が唐の青龍寺における修行を終え帰朝しようとした際、密教の三昧耶戒を授けて欲しいと願い出た龍体の女神。その女神こそ渇仰の信仰者として、インドから飛来した『善女龍王』(ぜんにょりゅうおう)である。

伝では恵果阿闍梨青龍寺を外護するためとするが、寧ろ、熱誠をもって真言密法三国諸大列祖を追いかけていた―――、そう言うべきだと思う。

三昧耶戒の受戒とは、即ち、真言密教の秘法に結縁することと同義である。それを知ってか、意を決し、恵果和尚から東海の蒼生の福を増すよう告諭されたばかりの真言第八祖・正嫡/空海に懇請したのである。

その時、善女龍王の受戒それ自体は許可されなかった。ある意味当然なのかも知れぬ。

諦めきれない善女龍王は、空海遣唐使一行が帰朝する船を追いかけ、九州大宰府に向かう一行を時に天空から外護しつつ、一緒に東シナ海の波頭を越える。

大宰府に到着し、一年ほど滞留を余儀なくされた空海。後年、宗祖大師は、最初に高雄山神護寺の清滝に降臨鎮座したことを第一の理由に挙げて、善女龍王に『清瀧権現』(せいりょうごんげん)の法名を贈った。龍(竜)の字に付いた『氵』(さんずい)は、求法熱誠の志を抱いて大海原を越えた証である。

伝では、肝心の三昧耶戒を授かったかどうかについては、実のところ鮮明ではない。けれども、『権現』を贈られた事実は重い。

真言密教嫡々の仏弟子に連なり、翻って、熱誠の信仰者を名実共に外護する、即ち『仏天』として、密法供養を受ける地位に昇られたのである。

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ところで―――、この清瀧権現で不思議な体験がある。まさに行者守護の誓願を思わずにはいられないものだ。これについては、日を改め、別稿でご紹介したい。