蓮華童子の日記

真言秘密行法の修法@自坊を中心にアップして参ります。

清瀧権現の神秘体験~その1~

ところで―――、清瀧権現に係わる不思議な体験のことである…。前に紹介した内容といくぶん重複するのだが、後日談があり、最初から順を追って記す。
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昨年の冬、修験道の伝法灌頂を控えて、準備に忙しくしていた時期のことである。職場の近所で床屋がないか、探し回ったことがあった。仕事の合間を見て、直前になったらタイミングよく剃髪していこう、と考えたのだ。

捜し歩いていた先、そう、フッと目を向けた先に、銀座で有名な某お稲荷さんのお社が目に飛び込んできた。(その場所は京橋寄りの裏通りに位置する)

場所柄、金網で囲まれていて、チョッと気の毒な感じさえしたが、ともかく『へえ~、こんなところにお稲荷さんか…』と、妙に印象に残った。

その日の帰り。中央線に乗ろうと、東京駅のエレベーターで人ごみをすり抜けていたその時…。一瞬、『グギッ』みたいな、いやな感覚が背中を走った。次の瞬間、背骨、それも肩甲骨の下横あたりが、ズキズキと痛み出したのだ。

何だかよく分からないが、その刹那、持っていた右腕ごと、カバンの先から背骨にいたる一直線上で、すごく強く引っ張られたような、そういう感覚があった。

そして、その晩から数週間―――、くしゃみができなくなっていた…。くしゃみをすると、すごく痛むのだ(笑)。

とりあえず、いつもお世話になっている、明大前の均整術のS先生のところへ駆け込んだ。診察台に上がって仰向けになり、S先生に症状を説明すると、S先生は、体の複数のツボを押し始めた。が、どれもこれも『ウグッ、イテテッ』の状態で、5分後『今日はダメ、おしまい』と相成った。

フッと周囲を見回すと、他の先生が唖然としている(⇒施術室全体が凍りついている)のが分かった。

『長くやっているけど、こんなの初めてですよ』『関係するツボが、どれもこれもダメなんです』『背骨が右回りに旋回している…』。私の顔をまじまじと見詰めながら、S先生はそう説明した。

『少し時間をおいてみて』『2~3日で腫れが引くはずだから、その後から治療します』となって、『今日は、だからお金は要らないです、治療してないから』と。

数日後に本山へ登ることを控え、『これはかなりまずいぞ』と思うものの、焦る気持ちがズンズン募ってきた。

翌日朝一で職場近くの整形外科へ直行。何枚かのレントゲン撮影の後、鎮痛薬と湿布剤をもらった。以後、『頼るのはこの痛み止めの薬と湿布剤だけだ』と、悲壮感にも似た気持ちで職場に戻ったことを覚えている。

その数日後だ。かなりの不安を抱えながら本山へ登る日がやってきた。一年越しで待った、とうとうその日が来たのだ。『今さら諦められるか!』、でも、『仏さまに預けるしかない…』。

ともかくもズキズキする痛みの中で、宿願の灌頂壇に向かうべく、いよいよその修行初日が始まった。修●殿正面の聖宝尊師の御影が、自分に向かってすごいスピードで迫ってくるような、そんな感覚に一瞬とらわれたような気がした。

~続く~