蓮華童子の日記

真言秘密行法の修法@自坊を中心にアップして参ります。

海老蔵という重み~その2~

とりあえず無事に手術が終了したとのことである。予断を許さない状況とは言え、奥さまやご家族、ファンや関係者の方々は、まずはホッとされたと信じたい。
 
ここでは話が一方的になることを避けるため、以下を補足しようと思う。
 
私自身は歌舞伎にはまったくの門外漢であるけれども、なぜだか彼(=11代目市川海老蔵)の芸風にとても魅かれる。だからこそ叱咤のひとつもしたくなる。
 
なぜならば、声の張り、“睨み”に至る所作(手指)の美しさ、そして身体全体に漲る『男の色香』とでもいうある種の艶っぽさは、他の歌舞伎役者の追随を許さない(と感じる)からである。
 
『素人のくせに何を言うか』であろう…。確かにそうだ。
 
彼がバラエティー番組に出演したことで顕わになったその二面性(舞台で見せる繊細で艶やかな美しさvs.バラエティー番組での粗野な言動)に若干の戸惑いをもったことがある一方で、彼の祖父/九代目市川海老蔵(十一代目市川團十郎)の声望を聞く機会もあって、いつの間にか“何だか忘れられない存在”になっている。
 
その『オーラの泉』で、美輪さんの語った話が今でも忘れられない。『それはね、あなたのおじいさまの舞台での美しさといったら、それは語り草…』という内容の発言だった。
 
そう、彼の祖父十一代目市川團十郎が九代目海老蔵であった時、『花の海老さま』と呼ばれるくらい“華麗”であり、“男前の美貌”であり、その強烈なオーラによって花街の女性を中心に絶大の人気を博していたと。
 
ところが非常に気難しい面がおありで、公演を突然休止することもしばしばだったとされる。それにはそれなりの事情があったそうだが、そういうところは孫の十一代目海老蔵にも(かなり)継承されたのかも知れない。
 
彼があるバラエティー番組で、『これを言っても誰も信じてくれないとは思うけど、僕は生まれる前の記憶がホントにあるんですよ。俺が行きますって言って、今の生まれる先を望んだんです』と言っていたことを思い出した。
 
これについて、もし江原さんの言うとおり“行者”だったら、私はあり得ると思っている。大勢の人を助けた積徳の行者であれば、私はそういう功徳力を仏天から許されたと率直に思う。
 
海老蔵さんに対して、『品行方正になれ』とはチョッと違う。もっと違う生き方(羽目の外し方)があるのではなかろうか、ということである。
 
父上が白血病に冒され、大手術の結果として血液型がA型からO型に変わってしまったという話をテレビで見た時、私は弘法大師の十住心論にある『身病の要は四大と鬼業…』の一節を思い浮かべていた。
 
その詳細はここでは述べないが、同じく中村橋之助さんの回で起きた異変を見ているから、『それなりに想像をしてしまった』ことは事実である。代々の歌舞伎役者について回る一種の宿業のようなものを垣間見てしまったような、そんな気がしたということだけ申し上げたい。
 
それにしても、彼は幸せ者だと思う。あらためて世間に感謝すべきである。心配してくれる人が、奥さまを筆頭にして、なんと大勢いることか。
 
ご参考を申し上げる。現行の企業社会では、たとえ自分に非がなくても、今回のようなトラブルには非常に厳しい。コンプライアンスということに関して、その認識の甘さを厳しく指摘される。トラブルに巻き込まれるような場所に近づいたことで、その判断能力だけでなく、その資質そのものを(遠慮会釈なく)疑われる。
 
自身が所属する組織、その背負っている看板に対する『reputation』(名声、評判)を失墜させることに繋がるすべてのエラー(失策)に対して、今の企業は極めて厳しいということである。(商売道具の顔をやられたという意味では、結果として“大失策”ということになるから、懲戒レベルを通り越して、即時解雇ということもあり得る)
 
実際、アリの一穴によって“一発退場”という事態に直結し、ここ数年のうちに名門と言われた企業が相次いで廃業に追い込まれたことは記憶に新しい。
 
自分の会社グループのことで恐縮だが、(誤解を覚悟で)以下の三つの行動原則をご紹介したい。迷った時、この三原則に帰るように常々言われているものだ。
 
一、『目指すところは世のため人のために励む、ということである』
二、『何事もフェアー・プレーに徹し、不正義・不公正に与しない』
三、『世界を知り、目先の狭い知見を離れ、広い視野をもって行動する』
 
NHK大河ドラマ龍馬伝』で、香川照之さんが好演された岩崎弥太郎の手になるものだ。坂本龍馬が暗殺される直前、『弥太郎、おまんは日本一の会社を作れ、おまんにしかできんこと…』という言葉を生涯忘れず、やがてその思いの結晶をこの三つの理念に昇華させて全社員に訓示したのである。
 
海老蔵さんのような将来を嘱望される花形役者にこそ知ってもらって、どうか元気な姿でファンの前に帰ってきて頂きたいと切に願っている。